EV(電気自動車)の充電設備の設置費用はどのくらい?工事の流れ、別受電方式のメリット

EV充電のポイント
EV(電気自動車)の充電設備の設置費用はどのくらい?工事の流れ、別受電方式のメリット

EV(電気自動車)を導入する際には、車両費の他に、充電器本体の費用と充電器の設置費用がかかります。しかし、「車両の価格は分かっていても、充電器関連の費用がどのくらいかかるかイメージできていない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、EVの充電器の設置費用を中心に、工事の流れや初期費用を抑えるポイントなどを解説します。

目次

EV(電気自動車)の充電設備の初期費用はいくら?

EV充電器の種類と価格

EV(電気自動車)の充電設備には、普通充電器と急速充電器の2種類があります。

①普通充電器
普通充電器は、一般的にオフィスや自宅などで充電器を専有して使用する際に設置する充電器です。可搬型(コンセントタイプ)と据置型があります。

可搬型(コンセントタイプ)では、ケーブルの片側にある充電用コネクターを車両に差し込み、その反対側にある電源プラグを充電器専用のコンセントに差し込みます。
一般的には充電制御システムと接続したり、高出力かつ短時間で充電したりすることはできませんが、本体価格は数千円から数万円程度であるため、初期費用を抑えたい場合にはおすすめです。

据置型は充電器本体に充電ケーブルが付いており、そのケーブルを車両に差し込む仕組みになっています。壁面に取り付けるタイプとスタンドタイプがあり、本体価格は約30万円となります。
据置型の充電器は、充電制御システムと接続できるものもあり、さらに可搬型よりも充電出力が高く充電時間を短縮することが可能です。そのため、機能性の高さや長期的な利便性の観点からみると据置型がおすすめといえます。

②急速充電器
急速充電器は、一般的に高速道路のサービスエリアやEV充電スポットなどで公共用に利用されています。
急速充電器は出力が20kW~150kW程度であり、普通充電器(6kW程度)よりも高い出力で充電できるため、充電速度が早いことが特徴ですが、本体価格は通常200万円以上となっています。

充電器については以下の記事で詳しく解説しています。

充電設備の設置費用の相場は?

実際に充電設備を設置する際にはさまざまな費用がかかりますが、今回は基本的な費用に絞ってご紹介します。

・普通充電器の場合
普通充電器を設置する場合は、本体価格(据置型で約30万円)に加え、最寄の既設分電盤からの配線や充電器本体の設置に関わる工事費がかかります。工事費は30~40万円が相場です。
分電盤から充電器までの配線が容易で距離が短いほど工事費を抑えられます。なお、可搬型(コンセントタイプ)でも充電器専用コンセントの設置は必要となり、工事費は10~20万円程度となります。

・急速充電器の場合
本体価格が約200万円以上かかることに加え、別途工事費が必要です。
充電器の出力が50kW以上になる場合は、設備を高圧化する必要があります。高圧化する場合、高圧受電設備が必要となり、充電器の本体価格に加え、設置費用として別途400~500万円ほどかかります。

EV(電気自動車)の充電器設置までの流れ

EV(電気自動車)の充電器の設置する際の流れは、最適な充電器や工事会社を選定するまでの流れと、設置工事を実施するまでの流れの2つに大きく分けられます。
本章では、EV充電器を設置するまでの2つの流れについてそれぞれ詳しく説明します。

工事会社選定までの流れ

まず、EV(電気自動車)の充電器を設置する際は、一般的に以下の流れに沿って工事会社を選定します。

工事会社選定までの流れ

①導入するEVの仕様を確認
まずは導入予定のEVのバッテリー容量と充電受入能力などを確認します。充電口の位置やケーブルの長さによって最適な充電器の設置場所が変わってくるため、この点もあらかじめ把握しておきましょう。車種によっては充電受入能力が最大3kWとなっており、6kWの充電器を設置しても出力が3kWに絞られるといった例もあります。

②適切な充電器を選定
EVの仕様などに応じて適切な充電器を選定します。なお、公共用の設置でなく自社利用での設置の場合は、急速充電器は高コストとなります。また、急速充電器1台をEV複数台で共有する場合は、満充電後に車両の入れ替えが必要となるなど運用に手間もかかります。
そのため、企業の専有スペースでEVを充電する場合は、普通充電器を選定することが一般的です。

さらに、普通充電器を導入する場合は、据置型にするか可搬型にするかを予算や充電出力を踏まえて選定しますが、法人車両で複数台EVを導入する予定があれば、コストダウンが図れる「充電制御」に対応した据置型も選定候補となります。

EV充電器の充電制御については、以下の記事をご覧ください。

③設置場所の確認
次に、設置場所を確認し、配線ルートを検討します。分電盤から充電器までの距離が近い場合はコストを抑えることが可能です。

④契約電力や既存の電力設備の確認
EV(電気自動車)の充電時には大きな電流が流れるため、電気設備の容量や契約電力を確認する必要があります。設備容量が不足する場合は電気設備の増強が必要となりますが、充電制御を活用することで設備容量を増強せずに運用することも可能です。

⑤工事会社の選定
EV充電器は一般的には「第二種電気工事士」以上の資格を有した者でなければ工事を行えません。そのため、候補となる工事会社を選定する際には、これらの資格を持っているかを必ず確認しましょう。
この他にも、費用だけでなく実績が十分か、また工事後のサポート体制がしっかりしているかも重要です。

工事会社の選定~設置完了までの流れ

候補となる工事会社を選定した後は、以下の流れに沿って充電器を設置します。

工事会社選定~設置完了までの流れ

①工事会社へ問合せ
まずはHP等から工事会社へ問合せます。問合せ段階で大まかな見積りを行っている会社もあります。

②設置場所の確認(現地調査など)
充電器の設置前に、工事会社と設置場所や工事方法、ケーブルの長さ・配線をどうすれば良いかなどを確認します。その際、もしも現地調査が必要となった場合は、立ち会いのもと電気設備や設置場所の確認作業が行われます。また、配線を埋設する場合は埋設物調査なども必要となります。

③設置見積
工事仕様を確定させた後に、詳細な見積りを行います。この段階で、工事費用の内訳をしっかり確認しておく必要があります。

④工事の申し込み
見積り内容を確認し問題がなければ、契約を締結して工事を申し込みます。

⑤日程調整
申し込み後に工事の日程調整を行います。場合によっては騒音が発生したり、工事車両等が道を一時的にふさいだりする可能性もあるため、事前に近隣への周知も行いましょう。また、工事内容や規模によっては電力会社への工事申請もあるため、それも含めた日程調整となります。 

⑥設置工事
契約の内容に基づいて工事を実施します。普通充電器の設置工事には以下4つの工程があります。

(1)配線工事
充電器へ送電するための配線や分電盤の設置を行います。

(2)充電器の設置工事
充電器は単に置くだけではなく地面や壁面に固定する必要があるため、自立式の場合はコンクリート基礎を設置して固定する工事を行います。
充電器設置後は、通電の確認、制御が必要な場合は通信確認(制御システムでの状態確認)を行う必要があります。もちろん、充電器としての充電機能の確認も必須です。

(3)充電場所の整備
駐車場などに新たに充電器を設置するスペースを確保します。それに伴うレイアウトの変更(駐車区画のラインの引き直しなど)も必要に応じて行います。

(4)その他充電設備の利用環境整備
必要に応じて充電器を保護するポールや風雨から守る屋根、設置場所の案内板や路面表示など、安全や利便性を向上するための工事を行います。

なお、(3)と(4)は、充電器を公共利用の場に設置する際は必須の工事です。

⑦支払い
工事が完了したら、契約内容に基づいて工事会社に工事費用を支払います。以上で充電器の設置に関する手続きは完了です。

充電設備の初期費用を抑えるポイント

複数台の充電器をまとめて導入する

1台ずつ設置するよりも一度に複数台の充電器を導入する方がトータルの工事費が割安になることが一般的です。
複数台を導入する予定がある場合は、なるべくまとめて工事を行いましょう。

補助金を活用する

充電設備の設置にかかる費用について、国や地方自治体が補助金を支給しています。そのため、申請要件を満たしている場合に活用することで、初期費用を削減することができます。

例えば、経済産業省が実施する「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」では、普通充電器の設置に対して機器補助率1/2、工事補助率10/10の割合(上限あり)で補助を行っています

※出典:経済産業省「充電インフラ補助の概要」

「別受電方式」を検討する

別受電方式とは、充電器を設置する駐車場に別途低圧線を引き込む方法のことです。
原則としては、「電気事業法施行規則」において1つの事業所に対して1つの受電点のみの利用が許可されています。しかし、EV(電気自動車)の普及にともない法令の改正があり、要件を満たせば2つ目の受電(別受電)が認められるようになりました。

別受電方式が特例として許可される要件については、資源エネルギー庁のページで詳しく解説されています。

参考:資源エネルギー庁「特例需要場所について」

EVの導入予定台数が多い場合は、既存設備が低圧の場合は高圧設備にする必要があり、その際に高額な高圧受電設備等の新設が必要となります。また、既存設備が高圧設備の場合でも、導入台数が多い場合は変圧器容量の増設などが必要となります。

別受電方式はこれらのコストを抑制することができ、更には充電制御システムと組み合わせることによってランニングコストも抑えられます。実際に、法人車両のEV化に取り組んでいるNTTグループでは、充電制御を活用しながら多くのEV導入拠点で別受電方式を採用しています。

以下では、別受電方式を導入した場合のコストイメージを、高圧設備を新設・増設するパターンと比較してご紹介します。なお、電気料金の計算式や単価は、東京電力の料金プランを前提としています。また、計算式を簡略化している点にご留意ください。

 <計算の前提条件>
・EV導入台数:20台

・1日の平均走行距離:30km
・1台当たり1日に必要な充電量:5kWh
・EVの電費:6km/kWh
・20台のEVが1か月(20日間)に必要とする充電量:2,000kWh

以上の条件を基に、各方式の費用・電気料金を求めると以下のようになります。

コストイメージ

高圧と低圧(別受電方式)の電気料金を比較すると以下の通りです。

B(高圧年間電気料金)-A(低圧年間電気料金)=397,509円

今回は計算式を簡略化したコストイメージとなっていますが、それでも低圧の方が年間の電気料金は40万円ほど安くなります。この40万円は、低圧(別受電方式)の年間電気料金の約4割に匹敵するため、インパクトの大きな額といえます。

また、設備設置費用を比較した場合、充電器を除く電気設備本体の価格だけ見ても低圧別受電の方が20万円ほど安くなります(実際の設置環境や工事内容によって金額差は異なります)。低圧設備から高圧設備に変更する場合は更に400万円の大幅なコスト増となります。

以上より、低圧設備で別受電方式を採用する方が多くの場合コストを抑えられることが分かります。なお、本試算に補助金は含まれておりません。

EVの電気料金については、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

EV(電気自動車)の充電器選びから工事手配は「EnneEV」にご相談を

EV(電気自動車)を導入する際は、最適な充電器や電力設備を選ぶことで、不要なコストを防ぎましょう。加えて、複数台の一括導入や補助金の活用、別受電方式の採用によって、さらなるコスト削減効果が期待できます。

エネットでは、お客様の電力設備の状況や、将来にわたる計画を踏まえたEV導入をご支援するEVスマート充電サービス「EnneEV(エネーブ)」をご提供しています。EnneEVでは、EV充電器の選定や調達、設置工事の手配、そして運用開始後のサポートなど、電力会社だからこそ提供できる一貫したサービスによって、お客様のコストミニマムなEV導入を支援します。

以下の資料では、社用車としてEVを導入する際に押さえておきたい、EV導入のポイントや、充電設備の導入費用などを詳しく解説していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

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社用車EV導入 ガイドブック

本資料では、世界と日本のEVシフトの現状やEV導入の際に考慮すべきポイントをわかりやすくご紹介しています。社用車としてのEV導入をご検討されている企業のご担当者様はぜひご覧ください。

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