物流・運輸業界が注目するトラックEV化の取り組みや課題は?導入事例を交えて解説

社用車EVシフトのノウハウ
物流・運輸業界が注目するトラックEV化の取り組みや課題は?導入事例を交えて解説

脱炭素・カーボンニュートラルに向けた取り組みが進む中、多くの企業・自治体で社用車/公用車のEV化が注目されています。物流・運輸業界も例外ではなく、トラックのEV化を進めることでCO2削減や企業価値の向上などのメリットを得られます。
本記事では、トラックEV化の取り組み状況や課題、メリット、導入事例を解説します。

目次

トラックEV化の現状と取り組み

EVトラックは電動モーターを動力源とするトラックであり、温室効果ガスを排出しないため脱炭素・カーボンニュートラルの実現に貢献する輸送手段として注目されています。
まずは、EVトラックの普及率と普及に向けた取り組みについて解説します。

EVトラックの普及率

現状では、営業用の車両総重量8トン以下のEVトラックの普及率は低い水準にとどまっています。
公益社団法人全日本トラック協会の発表※によると、令和5年度(2024年3月末時点)でのEVトラック保有台数は全国で2,599台です。これにハイブリッドトラック(9,970台)と燃料電池トラック(82台)を合わせた「電動車保有率」は2.9%となっています。

※出典:公益社団法人全日本トラック協会「トラック運送業界の環境ビジョン2030:サブ目標1」

いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそうトラック・バスなどの大手メーカーがEVトラックの開発に取り組んでおり、一部の大手運送会社が先行して導入を進めています。しかし、コストや航続距離などを理由に導入に至っていない物流・運輸業界の企業も少なくありません。

EV全体の普及率については以下の記事で紹介していますので、併せてご覧ください。

EVトラック普及に向けた取り組み

政府は令和3年(2021年)に公表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、2035年までに乗用車新車販売でEV100%をめざすという目標を掲げました。

トラックを含む商用車に関しては、8t以下の小型の車について、2030年までに新車販売で20~30%、2040年までに新車販売で100%(合成燃料等の脱炭素燃料の利用に適した車両との合計)をめざしています。
8t超の大型車については、2020年代に5,000台の先行導入をめざすとともに、水素や合成燃料等の価格低減に向けた技術開発・普及の取組の進捗も踏まえ、2030年までに、2040年の電動車の普及目標を設定することとしています※。

※出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

トラックEV化における課題

EVトラックがなかなか普及しない理由として、主に以下の課題が挙げられます。

⾞両価格・設備費⽤が高額

EVトラックを導入する際には、従来の内燃機関トラックと比較して高額な初期費用が必要です。
主な要因は車両価格と充電設備の整備費です。
特にバッテリーが高価であることが車両全体の価格を押し上げる一因となっており、一般的なトラックより数百万円規模で高額化するケースがあります。
さらにEVトラックを運用するには、自社の駐車場に専用の充電設備を設置しなければなりません。普通充電器本体で30万円程度かかり、加えて工事費用が数十万円発生します。

このように初期投資費用が大きいことから、特に小規模事業者にとっては導入のハードルが高いのが現状です。

EVの初期費用について詳しくは、以下の記事で解説しています。

長距離輸送に対応できない

一般にトラックは長距離輸送を前提として運用されており、24時間で1,000km以上走行する場合もあります。しかし、現在のEVトラックは一度の充電で走行できる距離が短く、長距離輸送には不向きです。
バッテリー容量を増やすことで距離を延ばせますが、その分車両が重くなり、積載可能量が減少するというジレンマがあります。

また、長距離輸送では頻繁な充電が必要となり、運行効率が低下します。一般的な社用車/公用車をEV化する場合には、夕方に帰社したEVを自社の駐車場で翌朝まで充電することが可能です。一方で、長距離輸送を担うトラックは走行の合間に高速道路のサービスエリア/パーキングエリアで充電しなければならないケースが多く、充電待機が発生することで物流業務の支障となり得ます。

EVの航続距離について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

充電時間が⻑い

EVトラックのバッテリーは容量が大きいため、一般の乗用車や軽自動車のEVよりも充電に時間がかかります。
充電している間は当然走行できないため、運行スケジュールに影響が生じ、稼働率が低下します。
地方や長距離輸送ルートでは、充電スポットが限られていることも課題です。

EVの充電時間について詳しくは、以下の記事で解説しています。

トラックEV化のメリット

前述のような課題はあるものの、トラックEV化には以下のようなメリットもあります。

温室効果ガスを排出しないためCO2を削減できる

EVトラックは走行時にCO2をはじめとする温室効果ガスを排出しないため、地球温暖化防止に大きく貢献します。国土交通省が2025年に公表した「運輸部門における二酸化炭素排出量」(2023年度)※によると、日本のCO2排出量全体の約19.2%を運輸部門が占めており、うち約7%をトラック(営業用・自家用計)が占めています。EVトラックの導入は、この排出量削減において重要な役割を果たします。

また、ディーゼルエンジンで走行するトラックは窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)などの大気汚染物質を排出しますが、EVはこれらの物質を排出しないため、大気汚染の防止にも寄与します。

※出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」

EVのCO2排出量や環境への負荷については、以下の記事をご覧ください。

環境への配慮をアピールでき企業価値の向上につながる

EVトラックの導入は、環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みを示す重要な指標となり、企業の社会的評価を高めます。
また環境配慮型の取り組みをアピールすることで、顧客・取引先、地域社会からの信頼を獲得でき、競争力向上にもつながります。
ESGに配慮した経営については以下の記事をご覧ください。

エンジン音や振動が少なく騒音対策になる

トラックは夜間や早朝に走行することも多く、騒音の問題を引き起こしやすい傾向がありますが、EVトラックはエンジン音や振動が少なく、走行時や停車時の騒音を大幅に抑えられます。
これにより、早朝や夜間の運行でも騒音問題を回避することが可能です。特に、住宅街や都市部での配送時に騒音が軽減されることは、騒音トラブルの解消に大きく貢献します。
また、騒音や振動が少ないためドライバーのストレス軽減にもつながります。

【EVトラックの導入事例】運送大手会社も2030年までに20,000台導入目標

三菱倉庫・三菱商事・ユアスタンドの3社は、2025年3月から医薬品輸送向けに中型EVトラックである三菱ふそう製「eCanter」を1台導入しています。あわせて、埼玉・三郷地区の拠点にEV充電設備を設置し、再生可能エネルギー由来の電力を使用することで、充電から走行まで完全CO2フリーを実現しています。
航続距離や温度管理等のデータも収集しており、導入拡大に向けて検討を進める予定です。

参考:三菱商事株式会社HP「三菱倉庫・三菱商事・ユアスタンド 完全CO2フリーの医薬品輸送の電動化を推進」

また、運送大手のヤマト運輸株式会社では、2030年までに小型商用 EV トラックを 20,000台導入する目標を掲げ、首都圏を中心に EV トラック(日野デュトロ 「ZEV」)500台を導入しています。
デュトロ ZEVはラストワンマイル(物流の最終拠点から届け先までの区間)向けに開発されたEVトラックであり、環境負荷軽減と集配業務における効率化を実現しています。

参考:ヤマトホールディングスHP

トラックのEV化はエネットの「EnneEV」

トラックのEV化は、環境負荷の軽減はもちろん、企業の社会的評価や騒音問題の解決にもつながります。コスト面や航続距離などの課題はありますが、すでに導入を進めている企業もあり、持続可能な物流を実現する上で重要な選択肢となっています。

トラックを含め社用車/公用車のEV化を効率的かつ低コストで導入・運用するためのソリューションとして、EnneEV(エネーブ)があります。
EnneEV(エネーブ)は、EV充電インフラの導入とEV充電器の遠隔制御により、電気料金の上昇を抑制するEVスマート充電サービスです。EV充電器の選定や調達、設置工事の手配、そして運用開始後のサポートまでワンストップで対応可能です。
充電制御により電気代を契約電力内にコントロールし、コストミニマムなEV導入を支援します。

EnneEV(エネーブ)の詳細は下記のページをご覧ください。

EV社用車運用のコストを抑えるスマート充電サービス『EnneEV®』エネーブ

EnneEVサービス資料

スマート充電サービス『EnneEV(エネーブ)』サービス資料

スマート充電サービス『EnneEV(エネーブ)』のサービス資料です。充電制御により充電電力を 契約電力内にコントロールすることで、電気料金の上昇を抑制。企業の社用車EV導入をご支援します。

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